2018/05/23

はじめアルゴリズム(3)



『はじめアルゴリズム』3巻を読んだ。

これは、おもしろいというより、すてきなマンガだ。

今巻で主人公のはじめくんが、
「今の僕にはまだ見えていない世界がある…」
と呟くシーンがある。

数学を通して、誰も見ていない世界を見ること、
それを目指して歩む人たちの道のりに、安っぽい言葉だけど、
心が、いや、魂まで、震える。


僕はたぶん、そういう機会に恵まれていたら、
数学に夢中だったかもしれない、と思うことがある。

数学はとてもおもしろい。
生物学も、歴史学も、そこにあるものを対象としている。
でも、数学はあるものではなく、そこから抽出した概念を取り扱っている。
それが現実を敷衍する。
まさしく、見えていない世界を、数学によって見ることができる。

ただ、数学的な思考には、特殊な才能と、おそらくある程度以上の訓練が必要だ。
数学といわずとも、算数が苦手は人はけっこう多い。
これはちゃんと理由がある。
数は、自然数ですら「決まり」であり、実在しない。
そんなものを扱う、操作するとなると、
僕たちの生得的な思考力から外れた枠組みが必要となる。
それはやっぱり、訓練してゆかないと身につかないものだ。
そして、あったほうが便利ではあるものの、
なくてもなんとかなってしまうものでもある。

僕はせいぜい学校で習う程度の訓練しかしなかった。
また、数学が僕らに見せてくれる世界、その可能性に、
僕は大人になるまで、まったく気づかなかった。
これはすごくおもしろいんじゃないかと気づいたときはもう、
あまりにも遅かった。

もちろん、今からでも訓練することは可能だけど、
まだ誰も見ていない世界が見られるようになることは、
もはや絶対にありえない。
誰かが見つけた新しい世界を理解しようとするだけでも、
おそらく、猛勉強しないと無理だろう。
そして、僕は違うことに全精力を傾けているので、
残念ながら、そっちに力を向けることはできない。


ところで、あまり共感をえられないかもしれないが、
小説を書く、物語をつくることは、
どこか数学に似ているように、僕には感じられる。

見えていない世界が、物語をつくり、小説を書くことによって、見えてくる。


マンガという物語で、とてつもなくおもしろい数学を描いている、
この作品は、本当にすてきだ。

出てくる数式などは一切わからなくても全然大丈夫なので、
是非読んで欲しい。


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